水処理の対象物について
水処理で、除去が必要となる物質は各工場において様々ですが、主な対象物質について解説します。
微生物(細菌)が汚水中に存在する汚濁物質(有機物)を分解するときに、酸素を消費します。水質汚濁が進んでいる場合は、有機物の量が多く、微生物の数が増加し分解するときに消費する酸素量も多くなります。微生物が有機物を分解するときに消費する酸素量をもって、水中に存在する水質汚濁物質の量の指標としたものがBODといいます。
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C O D
海水などに含まれる被酸化性物質(主に有機物)を、酸化剤(過マンガン酸カリウム)を用いて一定の条件下で酸化するときに消費される酸化剤の量を、酸素の量に換算したものです。
酸化される物質の大部分は有機物ですので、CODは海域及び湖沼における有機物による水質汚濁の指標となっています。また、工場排水の指標としても用いられています。
アンモニア性窒素
水中のアンモニア、またはアンモニウム塩をその窒素量で表したものです。下水中のアンモニアは硝化菌の作用により酸化され、亜硝酸を経て硝酸となります。下水中のアンモニア性窒素は主に、
し尿、工場排水などに由来し、水の汚染指標として、また、処理効果の判断指標として用いられます。
n-Hex(ノルマルヘキサン)
水中の「油分等」を表わす指標です。
動植物油脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質などの脂肪酸誘導体、ワックスグリース、石油系炭化水素等の総称で、溶媒であるn-ヘキサンにより抽出される不揮発性物質のことをさし、農薬、染料、フェノール等も含まれます。 海域における生活環境項目について、A及びB類型で「検出されないこと」と定められています。
水質汚濁防止法(1970)に基づく排水基準では、鉱油類含有量を5mg/L以下に、動植物油脂類含有量を30mg/L以下と定めています。
鉛
重金属含有水は、水質汚濁防止法において排水基準が厳しく設けられています。
▼排水基準
鉛及びその化合物 0.1 mg Pb/L
銅含有量 3mg/L
亜鉛含有量 2mg/L等
亜鉛
亜鉛の主な原子価は2価であり、硫酸亜鉛や硝酸亜鉛があり、これらは水に溶解して、[Zn(H2O)4]2+、[Zn(H2O)6]2+等を生成し水溶液は無色です。処理方法はアルカリ沈殿法が一般的です。
ダイオキシン
水中のダイオキシン類およびPCBの存在形態は、懸濁物質(SS)に付着した状態の懸濁態と、水中の溶存態の2種類に大別されます。排水中のダイオキシン類およびPCBは、水中のSSに吸着しやすく、大部分が粒子径0.22~1μmのSSに吸着された状態で存在しています。 懸濁粒子(SS)を凝集沈殿して上澄水を得る凝集沈殿処理が、除去する方法として有効です。
鉄・マンガン
水に異臭味(金属臭)を与えたり、褐色または黒褐色の沈殿物となりやすいスケールや鉄バクテリアの発生で管の閉塞や熱効率を低下させます。水道水基準としては鉄0.3mg/L、マンガン0.05mg/Lとなっています。自然水にも鉄・マンガンが比較的多量に溶存していますが、鉄はpH9以上のアルカリ性で沈殿除去又は膜処理、マンガンは酸化処理が一般的です。
リン
湖沼や閉鎖性水域における富栄養化の原因物質となっています。
リン化合物は、食品、洗剤、肥料、半導体、鉄鋼業などの工業分野における排水に多く含まれています。凝集沈殿や晶析などの物理化学的処理技術が一般的ですが、近年生物処理技術についても実用化されてきました。
シアン
メッキ工場からの排水に含まれることが多く、処理方法としてはアルカリ塩素法を用い薬品量制御はORP計で行います。
フッ素
アルミニウムの電解精錬工程、リン酸肥料の製造工程、シリコンなどの電気部品洗浄工程等の排水に多く存在しています。
Ca塩凝集工程で一次処理しAl塩又はMg塩凝集沈殿、吸着処理等の高度処理を行うのが一般的です。
ホウ素
ガラス、陶器、ホウロウなどの製造工場排水やゴミ焼却場洗煙排水、埋め立て処分場排水、排煙脱硫排水などに含まれています。
処理方法は凝集沈殿処理やイオン交換処理方法があります。
セレン
主に、乾式複写機感光体、ガラスの着色剤、顔料の製造工程からの排水やゴミ焼却場洗煙排水、石炭火力排煙脱硫排水等に含まれています。 処理方法は鉄塩を用いる凝集沈殿処理やイオン交換処理があります。